今回のインタビューに答えてくださった方は、
1989年秋田県生まれの長谷川 聡美さん(28歳)です。
173センチ55キロ 性同一性障害です。
大学を卒業後は映像制作会社に入社。
その会社に在職中に趣味で培ったスキルを活かしてイラストレーターのお仕事と二足のわらじで取り組むも映像制作会社が倒産。
会社倒産後はイラストレーターのお仕事をメインに、現在は【自分と同じような悩みを持った人の手助けがしたい】という想いを胸に、ニューハーフさんやMTFさんへ向けて様々な取り組みを企画しているそうです。
キラキラ光ってみえる長谷川さんの瞳にはどのような未来が映し出されているのでしょうか。
1 わんぱくな幼少時代
小さい頃はどんなお子さんだったんですか?
わんぱくで生意気な子でしたね(笑)
活発で一度外に遊びに出たら帰ってこないと言われるぐらいわんぱくでした(笑)
では長谷川さんが、もの心がついたころのお気持ちとしては、「自分は女の子」というよりも「自分は男の子」というような認識だったんですか?
実は親づてに聞いた話なんですけど5歳くらいのときに「どうして僕は女の子じゃないの?」、「どうして男の子の服を着なきゃいけないの?」って聞いたのが始まりらしくて。
はっきりと憶えているのは8歳ぐらいから妹の服を拝借してこっそり着てたころですね。
それでは初恋は男の子ということですか?
わたしは男の子も女の子も両方初恋がありましたね。どちらも小学生のときです。
では私は女性なんだという気持ちに大きく傾いたのは、それよりも先の話になるんですね?
そうですね、大きく傾いたのは中学2年生の終わりぐらいからですね。
ただ私の場合、男性でも女性でも性格が合えば恋愛対象になるので、お付き合いする上で相手の性別はあまり意識はしませんね。
どんな性格の方に惹かれるんですか?
今までの経験上、ニューハーフである私自身を否定されたり傷つくのが怖いです。なので自分の趣味やありのままの自分を受け入れてくれる人がいいですね。
初めてお付き合いされたのはいつ頃ですか?
高校1年生のときですね。相手は女性で向こうから告白されました。
部活で野球をしていたので当時は同級生の女の子達から結構もてましたね。
それでは初めて男性とお付き合いされたのはいつ頃なんですか?
20歳ごろですね。大学の同じサークルの同級生です。その人とは結構長くお付き合いしましたね。
今は恋はしていないんですか?
現在は最近勤めていた会社を退職したので、恋愛よりもまず生活を安定させたいですね。恋愛は落ち着いたらまたゆっくりしたいと考えています。
2 夜のお仕事を経験して感じたこと
最近退職されたとのことですが、これまでの職歴を教えていただけますか?
大学の時に就活をしまして、映像制作会社に入社しました。仕事内容は主に撮影の補助や事務作業を行っていましたね。
具体的には県や市からの依頼を受けて、お祭りなどのイベントや催し物などの撮影・編集などを行うことが多かったですね。
大きな会社だったんですか?
いえ、それほど規模は大きくなかったですね。
入社してすぐに社長の下についてアシスタントをやって、慣れたら一人で現場に行くようになりましたね。
そうして仕事に慣れ始めた時期に夜のお仕事を始めました。
夜のお仕事というとバーやヘルスといったお仕事ですか?
ヘルスですね。
ヘルスのお仕事はを始めたきっかけを教えていただけますか?
ヘルス以外受け入れ先が無かったんです。
当時はメイクを一切したことがなかったので、メイク指導までしてくれるというお仕事というと、私が探してたときはヘルスぐらいしか求人が出てなかったんです。
それでは他のバーなどの職種では即戦力というか、ある程度容姿の面で仕上がっている人ということが応募条件だったんですね。
そうですね。もちろん高収入ということもありますが、ヘルスですとイチから色々と育成してくれるということが大きかったんです。
一つの部屋で女の子が待機する形のお店でしたので、一緒に待機している先輩からメイクやファッション、お勧めのクリニックなど色々と教えて下さいましたね。
その頃は女性ホルモンの摂取はされていたのですか?
女性ホルモンの摂取は23歳から始めていましたよ。
女性ホルモンの摂取することに迷いはありませんでしたか?
全く迷いはなかったですね。
私の場合は高校1年生ぐらいからインターネットで色々と調べたりしていたのでヘルスの先輩のニューハーフさんに病院へ連れて行ってもらいました。
その時に、最終的には性適合手術まで考えていますという気持ちを先生に打ち明けました。
ヘルスのお仕事をされてみてどう感じられましたか?
私はお仕事自体は苦ではなかったですね。ただ、一番の問題は人間関係でしたね。待機所といってもそれほど広くないですし。
私は一つのお店でしか働いたことがないので、自分が働いたお店のことしか分かりませんが、私が見た限りでは辞める人の原因のほとんどが人間関係にストレスを感じていたようです。
恐らく女性として生きたい方と、ニューハーフという職業としてお仕事をされている方では考え方に違いがあると思うんです。
戸籍が男性で女性として生活しているという点では同じですが、それぞれ最終目標地点が違うように感じます。
待機所の中でもグループが分かれていたんですか?
分かれていましたね。
女性になりたい人という人は普段から女性として生活をしたいと考えているのでナチュラルな女性を目指します。
逆にニューハーフとして生きたい方はお仕事としての意識が高いので男性の視線を引く格好をされていますね。
主観的に感じたことなので、もちろん全てがその通りだとは思いませんがニューハーフさんとMTFさんでは女性としての立ち振る舞いが違うように思います。
3 絵を描く趣味がお仕事になった!?
映像制作の会社を辞められた経緯を教えていただけますか?
すごく簡単な話で会社が破産しちゃったんです。
それで今はどのようなお仕事をされてらっしゃるんですか?
個人でイラストレーターの仕事をしています。
大学生の頃から趣味で絵を描いてまして、ブログやtwitterやSNSに載せてたんです。
それを見て下さった企業さんや個人さんからお仕事のご連絡をいただくようになりましてイラストを描かせて頂いてました。
それはすごいですね。そうした仕事の依頼はいつ頃から届くようになったんですか?
わりと最近で3年前ぐらい前からですね。
本格的に描き出したのは大学生からですが絵を描くのは小さい頃から好きでした。
ただ、それが将来自分の仕事になるとは夢にも思いませんでしたし、今は好きなことをしてご飯が食べれてるので幸せですね。ありがたいです。
すごく素敵なお話ですね。
実は映像制作の会社がつぶれる前から、イラストのお仕事のお話をいただいて、副業が禁止ではなかったので少しの期間ダブルワークのような形でした。
映像制作の会社程ではありませんが、贅沢をしなければ食べていける程度の収入がイラストのお仕事でありましたので、失業してもあまり生活面での不安はなかったです。
先ほどは生活を安定させたいとお話されていましたが?
収入面というよりも、現在友人3人とルームシェアをしているんですが、友人の一人が転勤で、もう一人の友人が家庭の事情で実家に帰るので、今住んでいるところからは引っ越ししようと思っています。
そうなんですね。ヘルスは今も続けているんですか?
今はもう辞めています。長く出来る仕事ではないですしね。
たまに知り合いのバーのお手伝いをしたりはしています。
4 最終的に自分でどうなりたいかも自分で考えるようにしないといけない
今後の長谷川さんの展望を教えていただけますか?
これからもイラストのお仕事はずっと続けていきたいですね。もう少しイラストのお仕事で稼げるようになれたらと思います。
それから今一番やりたいことは、これまでセクシャリティにおいて自分が悩んできたことと同じ悩みを抱えている人に、何か良いきっかけを与えれることがしたいなという想いがあります。
やっぱり、ニューハーフさん、MTFさんの大きな問題は就職だと思うので、そこに関して何か可能性を示せるようなことができたらなと。
それ以外でも何から始めたらいいか分からない人に、メイクの仕方や仕草、話し方などのサポートをしたり、過去に私が先輩のニューハーフさんやMTFさんにしていただいて助かったなと思ったことを困っている娘にしてあげたいです。
アドバイスじゃなくて手取り足取り介入してしまうと、その子が挫折した時に「何をしていいかわからない」というように主体性がないままで考えるチカラが奪われてしまうので「最終的に自分でどうなりたいかも自分で考えるようにしないといけない」という話もしていけたらなと思っています。
今後の長谷川さんの活躍が楽しみですね!
美塾でも何かお手伝いが出来ることがあれば宜しくお願い致します。
今日はありがとうございました。
その時はぜひ宜しくお願いします!ありがとうございました♪
~インタビューを終えて~ 長谷川さんから学んだこと
現在は東京に住む長谷川さんですが、インタビュー中に時折でる秋田の方言によって、その場に暖かい空気が広がり、終始和やかなインタビューとなりました。
長谷川さんの勤めていた会社が突如破産することになっても、慌てることがなかったのは不足の事態が起こっても収入源を複数持つことにより、リスクの分散が出来ていたということが良かったようですね。
またそのリスク分散となったお仕事が、元々は自分の趣味であったということも注目されます。
現在はブログやTwitter、フェイスブック、インスタグラム、ユーチューブなどで個人が自由に情報を発信できる時代です。
長谷川さんの様なケースは特殊な事例ではなく、趣味でブログを書いている私の友人のもとには、多くの企業から広告・求人情報を掲載して欲しいという依頼が来るようです。
自分の好きなことを情報発信するということはあまり難しいことではなく、誰でも簡単に真似をすることが出来るのではないかと感じました。
今回もご覧いただきありがとうございました。