【今回のインタビューに答えて下さった方】
▼高橋あずささん(29歳)
1988年 神奈川県生まれ
172センチ 58キロ 29歳 アパレル会社 事務職勤務
街を歩くとで男性からよく声を掛けられるという話もうなずける、高橋さんは容姿、仕草、声全てにおいて見紛うことなく女性のそれだ。
20代後半にホルモンを摂取し始め女性の容姿に変えていくまで、学生時代は引きこもりがちで思い悩んで過ごした日々。
そこから勇気を持って一歩踏み出すことにより見えてきた理想の女性像を明るい語り口で話してくださいました。
女性よりも女磨きに取り組み美しさを手に入れた高橋さんの魅力にせまります。
1セクシャリティに違和感を覚えた頃
高橋さんがご自身でセクシャリティが周りの人と違うと感じるようになったのはいつ頃ですか?
考え始めたのは高校生ぐらいからですかね。
一番のきっかけになったのは大学一年生のときに初めて女性と体験をしてからです。
バイト先の女の子から告白されて付き合うことになったんですが、デートを何回かしているとまぁそういうエッチする様な雰囲気になることもあるじゃないですか?
よし一度やってみるかと思ってやってみたんですけど、下の方が反応せず上手くいかなくて(笑)
初めてだから緊張すて上手くいかなかったとかではなく?
緊張して大きくならないとかは他の人もあると思いますが、それだけじゃなく私の場合はただ単に楽しくもなかったですし、なんか違うなっていうのを感じたんです。
人生で一番悩んだ時期はいつ頃ですか?
20代前半ですかね?
段々年齢を重ねるとおじさん化してくるので(笑)
ずっと一人で悩んでましたね。
世間というか周りの人には話したことなかったですけど。
その頃の自分に今声を掛けれるならどのような言葉をかけますか?
「変に気にしないでサッサと飛び出したらいいよ。」と言いたいですね。
「早いうちに(女性ホルモンの摂取を)やった方がいいよ。」とも言います。
18歳の頃の自分に言いたいです。
どんどん容姿が男性化するんで。
10代から始めれば骨格がそんなに男らしくなることがないですからね。
2初めての就職と転職
高橋さんは高校生の頃にご自身のセクシャリティについて少し周りと違うかもと感じ始められたとのことですが、高校生といえば進路を考える時期でもありますよね?
高校生の頃の進路についての判断や選択にセクシャリティの影響はありましたか?
例えばニューハーフという個性を活かすお仕事をしたいとかは考えませんでしたか?
高校生の頃は親も大学の進学を望んでいましたし、セクシャリティについても少し周りと違うかもなぁぐらいにしか思っていませんでしたので、特にニューハーフで仕事をしたいとかは考えてなかったですね。
それでは大学にご進学されてからはいかがですか?
就職活動の時期に進路の判断基準にセクシャリティの影響はありましたか?
例えば私と同じように性別に違和感をもっている人でも、それを周りに公表する人もいますし、しない人もいますし、人によっては身体的治療を望む人、逆に望まない人もいて人それぞれじゃないですか?
大学生の頃は私も色々考えたんですけどカミングアウトせずに普通に男性のまま就職しようと思いました。
最初はどのようなお仕事に勤められたんですか?
飲食関係のお仕事に就職しました。
大学生の頃にアルバイトをしていたところで、アルバイトしているときから大学卒業後はうちで正社員にならないかというお話をいただいていたんです。
職場の人達がとても良い人ばかりだということもありましたし、楽しい職場でしたので二つ返事でokしましたよ。
お給料もよかったですしね(笑)
現在はアパレル関連の会社で事務職をされてらっしゃいますが、飲食のお仕事からなぜ転職をされようと思われたのですか?
飲食ってやっぱりけっこう体力勝負のところがあるんですよね。
女性ホルモンを取るとなるとやっぱり体力が落ちるので、体力的に飲食の仕事を続けるのはキツいだろうなぁ~っていうのがあったんです。
それで事務職などの比較的体力面では、飲食よりもキツくないデスクワークに就きたいなと思うようになったんです。
希望される事務職のお仕事はどのように探されたのですか?
一般の転職活動をされている方と同じだと思いますよ。
ハローワークやインターネットの求人情報をみたり、特に変わったことはしていませんね。
その転職活動の時点では、まだホルモンの錠剤や注射などはしていませんよね?
はい。
次の会社にも男性として入社しました。
ホルモンの錠剤や注射などは事務職についてからですね。
錠剤や注射を始めてからご自身でどのような変化を感じられましたか?
まずは性欲がなくなります。
筋力や筋肉も無くなります。
水泳をやっていたので肩周りと腕の筋肉はまだありますが(笑)
あと自分では気づかなかったんですが目が優しくなったと言われますね。
雰囲気も柔らかくなったねとも言われます。
そのように自分の見た目や内面が変わっていくことは、怖いという感情が湧くのか、それとも女性に近づくので嬉しいという感情が湧くのかどのようなお気持ちなのですか?
自分の理想というか、なりたいイメージに近づくので嬉しい気持ちになりますよ。
その後、ホルモンの錠剤や注射の影響で変化する高橋さんの容姿を見て、周りの上司や同僚の方はどのような反応でしたか?
毎日顔を合わしていると気付かないみたいですよ(笑)
ただ段々と胸が出てきてしまいまして、冬場はいいけども薄着になる時期は誤魔化しきれないなと思って、早い段階で会社に言いました。
そのとき会社からは何と言われたんですか?
「仕事に支障がでなければいいんじゃない。」と言われました。
今の仕事は自分に合っていますし、職場の皆さんも理解してくれていて働きやすいので続けていきたいですね♪
それから今の職場が働きやすい点として、髪型と服装が自由であるということもあります。
ニューハーフとして働く場合を考えると、髪型や服装が自由だということは大きいんじゃないかなと思いますね。
3副業を始めてみて
事務職のお仕事に就職されてから本格的にホルモンの錠剤や注射などを始められたとのことですが、女性の容姿を目指すのはお金がかかるのではないですか?
そうですね、ホルモンの錠剤や注射だけでなく美容にはお金がかかります。
性転換の手術を考えている人もいますし、胸を大きくしたい、声を変えたい人もいますからね。
それ以外にも化粧品や美容液などパス度を上げていこうと思うと、人によってはお金はいくらあっても足りないという感じじゃあないでしょうか?
事務職のお仕事だけでは厳しいですよね?
そうですね、事務職に就いてから副業を始めました
どのような副業を始められたんですか?
飲み屋さんのお仕事ですね。
ニューハーフさんが働いているバーです。
そのときは女性の容姿で働かれたんですよね?
そうですね。
街を歩いていても浮いちゃわないようにというか、世間の人が一目見て男だとバレるような女装にはなりたくなかったので、待ち行く人とすれ違っても違和感をもたれないように努力しましたね。
初めて女装をするときは情報がなく大変かと思いますが、同じお店のキャストさんからメイクや美容などを教えてもらったりしたんですか?
私はメイクもお洋服もインターネットで情報を収集して、全部自分でやりました。
そのバーのお仕事はニューハーフさん向けの求人から応募されたんですか?
いえ、当時はニューハーフの世界について右も左も分かりませんでしたので、ニューハーフ向けの求人情報に応募するのではなく、私の場合は、まずお客さんとしてニューハーフが働いているバーに行ってみたんですよ。
何度かそうしてお店に通っているうちに、お店の人から働いてみないかと言っていただいて。
すごいですね!スカウトされたんですか?
いえいえ、そんないいものじゃなく、ただお店で働いている女の子が少なかっただけですよ~(笑)
働いてみたら色々と経験が出来てきっと得ることがあるだろうし、それでお金まで貰えるんだったらいいかなぁと思って(笑)
経験とお金もそうですが、ホルモンや手術についての情報にも触れられますよね?
インターネットからの情報だけではない、職場にいるニューハーフさんからの生の声の情報は有益なのではないですか?
そうですね、情報収集は大事ですね。
バーの仕事を始める前はまだ女性ホルモンを錠剤でしていたんですが、同僚から錠剤よりも注射の方が体の負担が少ないとか、性同一性障害の診断書がなくても注射してくれるところがあるよとか教えてもらえましたね。
それまではお家の中でインターネットから情報収集して女装したりしていました。
初めてお客さんとしてバーに行くときに緊張しませんでしたか?
行くか行かないか半年近く悩みました。
バーの扉を開けた時はお店の人はどんな反応だったんですか?
普通にお客様として迎え入れてくれましたよ。
「お姉さんこのお店初めて~?」って言われました。
他のお店で働いているんじゃないかと思われてたみたいです(笑)
それからそのお店で働かれることになる訳ですが、実際働いてみてバーのお仕事はどう感じられましたか?
とても楽しかったです。
それに女装を始めた頃は自分の格好に自信が無かったんですけど、色んなお客様から「君なら大丈夫だよ。」と言ってもらえることで自信を持てるようになりました。
今でこそ何ともなく女性の容姿で外に出られてますけど、あの頃は客観的に自分がどう見えてるのかとても気になってました。
コンビニの店員さんってレジを打つ最後に性別や年齢を判断するボタンを押すんですけど、男性ではなく女性の側のボタンを押されるようになったときは嬉しかったですね。
女性として見られることが増えてくるにつれ自信が出てきたんですね。
他にも同じように感じたシチュエーションはありますか?
毎日電車に乗ってると、男の人と女の人の距離感がだんだん変わってくるんですよね。
女の人が近寄って来ることが増えるんです。
例えば私の座っている隣の席が空いていてる場合と、向いに座っている男性の隣の席が空いているみたいな状況では女の人は必ず私の隣に座りますし、すごい距離が近いというか一歩踏み込んだ距離感なんですね。
男性ではなく女性だから安心感を持ってくれているみたいな。
その他では、人混みを歩いていると道の譲り合いになるじゃないですか?
元々の男の時とかだとみんな道を開けてくれるんですけど、パス度が上がって女の子っぽくなると段々道を開けてくれなくなるんですよ。
女の子だと甞められるというか軽く見くびられるというか。
面白いですよフフッ(笑)
あとは美容室のチラシをもらったり、チャットレディ募集の広告入りのティッシュもらったり、ナンパされるようになったりとかですかね(笑)
4これからの生き方
将来のビジョンを教えていただけますか?
うーん、将来ですか?
わたし今の時点で結構幸せなんですよね。
女の子として生活を初めてまだ1年も経ってないので楽しいことだらけで。
お化粧するのも楽しいし、着てみたいお洋服も着れてエンジョイできています。
ただ将来的には性別適合手術をして、結婚出来ればいいですね。
自分より身長が高い人がいいなぁ(笑)
高橋さんは料理を作るのが趣味だそうですが?
料理を作るのが好きなんです。料理をしてる時って何も考えずに作ることに没頭できるんで。
手料理を食べてくれる身長の高い彼氏が出来るといいですね(笑)
そりゃあもう言うこと無しですね(笑)
今一番やりたいことは?
お母さんを旅行に連れていってあげたいですね。
こういう自分を受け入れてくれて、今は一緒にお洋服や化粧品を買いに行ったりもするんですよ。
じゃあ理想の女性はお母さんということですか?
そうですね、将来はお母さんみたいな素敵な女性になりたいなぁ。
私のお母さんはもう60歳に近いんですが、まだまだ女を捨ててないんですよ。
私がネイルをしているのをみたら、自分も負けてられないわっていって、これまでしたことがなかったのにネイルを始めたりするんですよ(笑)
お父さんとも今でもラブラブで幸せそうなんですよね。
母でもあり女でもありすごいなって尊敬しています。
最後に座右の銘といいますか好きな言葉を教えて下さい。
うーん、、、座右の銘とかはないですが、一年前の自分より少しは成長できたかなと思えるように生きています。
わたしも色々と悩んだ時期はありますが、ありのままの人とは違う自分を受け入れることが出来て、今を楽しく生きれています。
あまり偉そうなことは言えませんが、このインタビューを見て下さってる方々には、今悩んでらっしゃることを個性として受け入れていただければ、道は開けるのかなと思います。
今日はどうもありがとうございました。
お父さんとお母さんのような幸せなパートナー関係を築けるといいですね。
こちらこそありがとうございました♪
~インタビューを終えて~高橋さんから学んだこと
今回のインタビューの中では、
『ニューハーフとして働く場合を考えると、髪型や服装が自由だということは大きいと思う。』
というお話が高橋さんからありました。
業界や職種だけでは何ともいえず社風によるところが大きいと思われますが、ベンチャー系の会社やIT系や通販系の内勤の女性は、自由にオシャレな服装をしている方をよく見かけます。
現在は、求人情報に服装や髪型が自由な点をアピールポイントにして募集している企業もありますので、そのような企業がないかどうか意識をしてチェックしてみてはいかがでしょうか?
高橋さん自身は飲食とアパレル関連のお仕事にお勤めでしたが、それ以外にも、コールセンター・デザイナー・イラストレーター・プログラマー・エンジニア・ライター・編集者など、比較的服装や髪型が自由なお仕事が探せば色々とあるんだなということがわかってきます。
ただ、高橋さんや以前インタビューをした小森さんは男性として入社され、採用されてから女性の容姿に変わられましたが、既に女性の容姿で就職活動をする場合には、容姿が完全に女性で周りが違和感を抱かないレベルの 『パス度』の高さが重要になってきます。
ニューハーフさんがお昼のお仕事への就職を望まれる場合は、高橋さんの様に『パス度』を意識し自分磨きを重ねていくことが必要なんだなと強く思い知らされます。
『パス度』に加えて、前回インタビューをした大矢さんのように『資格』や『専門技術』を持ち合わせれば仕事の選択肢も増えてくるでしょう。
◆インタビュー記事を読んで下さる皆さんへ
これからもニューハーフ美塾では、今をハッピーに生きるニューハーフさんへのインタビュー記事をドンドン掲載していきます!
『こんな質問をして欲しい』ということや『こんな情報が欲しい』ということがありましたら、ドシドシご意見をお寄せ下さい。
運営者情報 ニューハーフ美塾事務局
連絡先 info@newhalf-bijuku.com