【今回のインタビューに答えて下さった方】
▼牧野志保 さん
1992年 静岡県生まれ
170センチ60キロ 25歳 工場勤務 派遣社員
父は日本人で、ロシア人の母を持つ牧野さんは人混みの中でもひときわ目を引く美しさだ。
青春の全てをかけて打ち込んだサッカーを怪我により挫折し、自殺を考えたほどのうつ病を患った過去。
しかしそんな過去を語る彼女の表情に一点の曇りもないのはなぜだろう?
インタビューを終えてその疑問が晴れることになる。
牧野さんの強く穏やかな視線は未来を見据えています。
◆目次◆
1男性器ってなくなるんでしょ?
2サッカーに打ち込んだ学生時代
3挫折とうつ病
4うつ病からの解放と根本の原因
5現在のお仕事
6今後の生き方
1 男性器ってなくなるんでしょ?
初めてご自身のセクシャリティに違和感を感じたのはいつ頃ですか?
えーっとそうですね、幼稚園になる前ぐらいですね。
男女の差がわからなかったんです。
「何で男の子と女の子と分類さるんだろう?何で自分は女の子の列に並べないんだろう?」って。
自分のおちんちんは成長するにつれ無くなると思っていました(笑)
初恋は男性だったんですか?
初めてお付き合いしたのは女性ですね。
中学生の頃です。
まぁ初恋というよりも向こうがいいなと思ってくれていたみたいで、放課後の誰もいない教室で告白されて付き合うことになりました。
男性とはまだお付き合いしたことはないんですよ。
2 サッカーに打ち込んだ学生時代
牧野さんは学生時代に相当サッカーに熱心だったそうですね?
父も兄2人もサッカーをしていましたのでその影響で幼稚園から始めました。
それでは自発的というよりはやらされたという感じですか?
最初はあまり楽しいなとは思わなくて楽しいフリをしてましたね。
ただ家族の誰よりも才能があったのか、高校の進学時には多くのサッカーの強豪校からお誘いをいただきました。
初めて付き合ったのは女性と言いましたが、中学生の当時サッカー部にちょっといいなと思う男の子がいたんです。
その子も上手で将来プロになるだろうぐらいの子で、その子がプレーしやすいようなパスを出そうとしているうちに、
相手がパスを受けやすいタイミングや、受けやすい場所にパスを出すように意識していると、
「牧野のパスは受け手への愛情を感じる」とチームメイトのみんなに言われるぐらいパスが上手になりましたね(笑)
3 挫折とうつ病
高校生の頃に大きな怪我をされたそうですね。
高校三年生の最後の県大会の決勝の試合前に、膝の靭帯を断裂をしたんです。
高校の3年間は、全国大会で優勝するために必死に練習してきたので、かなり落ち込みましたね。
ただサッカーはもう既に生活の一部になっていたので、辞めるということは頭に浮かばなくて、大学に進学してからも続けようと思いました。
怪我をしたんですがスポーツの推薦で大学に進学できる状況でもあったので。
大学に進学してからはどのような生活を送られたんですか?
実は大学生の頃にうつ病を発症したんですよ。
怪我のリハビリは順調で医者からもサッカーをしても大丈夫と言っていただいたんですが、いざ怪我が治ってから大学のサッカー部の練習に参加したときに戸惑いとショックを受けまして。
どういったショックを受けたんですか?
怪我をする以前のようなパフォーマンスが出来ないのはもちろん、ボールに触れた時の感覚も以前と違い戸惑いましたし、頭の中で描いたイメージ通りの動きができない自分に対して、怪我をしたときよりも大きなショックを受けました。
それから段々と練習に顔を出さなくなり引きこもりがちになって、大学にも行かなくなりました。
けっきょく大学は辞めてアルバイト生活を送るようになったんです。
そうやってアルバイトしながら生活していた時期に、高校時代や大学のチームメイトが活躍しているのを噂で耳にするたびに、「自分は今何をやっているんだろう」と彼らと自分を比較して自己嫌悪に陥ることが増えていったんです。
そして中学生の時に気になっていた同級生なんですが「あいつプロのサッカー選手になるらしいよ。」と別の友人から聞いた時に、嫉妬というか心から喜べない自分に劣等感がピークになり、何に対しても無気力で完全に引きこもってしまうようになったんです。
4 うつ病からの解放と根本原因
うつ病からはどのようにして立ち直られたんですか?
当初精神科の先生から薬を処方されていたんですが、全く効き目は無かったんです。
でもこの状況を何とかしたいなっていう気持ちはあって、でも何も頑張れないといった日がずっと続いていました。
そんな中改善のきっかけとなったのが、セクシャリティについて考えるようになったことです。
引きこもっていたときはサッカーのことばかり考えていたのですが、ふと「そういえば自分は小さい頃に何で男女の差がわからなかったんだろう」と頭に浮かんだことがあって、それから次第にサッカーのことでなくセクシャリティについて考える時間が増えるようになったんです。
そうしてセクシャリティについて考える時間が増えるようになると、段々と心がとても落ち着く感じがするなと思うようになっていきました。
もしかすると自分は女性になりたいのかな、という疑問もその頃に出てきました。
そんな時に名古屋に住む幼なじみの女の子が、「私が今働いている職場が働ける人を探しているんだけど、名古屋で働いてみる気はない?」と連絡をくれたんです。
その幼なじみにだけは中学生ぐらいの時に「自分は普通の男じゃないかも」みたいな話をしていたということもありましたし、連絡をもらったとき「家族や知り合いがいない地で働いて、女の子の格好をしたい」という気持ちになったんです。
幼なじみには連絡をもらってから2、3日ほど経って名古屋に行きたいと伝えました。
それから実際に名古屋でお仕事を始められてからは、うつ病の具合はどのような状態だったんですか?
名古屋で働き初めてから女性ホルモンの錠剤を飲み始めましたんですが、錠剤を飲み始めてから自分でもびっくりするほどうつの症状が改善していきました。
そのようなことがあったので、サッカーの挫折はあくまでも病を発症させたきっかけで、うつを引き起こした根本の原因はわたし自身のセクシャリティに根ざすものではないかと思うようになりました。
セクシャリティについて感じていた違和感を意識して見て見ぬフリをしていたわけではないのですが、もっとしっかりと向き合う時間というか、考えることをしていればよかったのかなと思います。
5 現在のお仕事
名古屋でのお仕事はどういったお仕事なんですか?
工場で部品の加工や組み立てをする派遣のお仕事です。
先ほどのお話の中で働き始めてからホルモンの錠剤を飲み始められたとのことですが、容姿の変化に対して同じ職場で働いている人達の反応はどのようなものでしたか?
ホルモンの摂取を決意してから、まず最初に、直属の上司に私はこういう人間で女性になろうと思っているということを伝えました。
上司は理解のある方で、「今後牧野さんが働く中で困ることがあったらすぐに相談するようにしてね。」と言ってくださいました。
上司の方にそういっていただけると心強いですね。
上司以外の人達の反応はどうでしたか?
ホルモンの影響なのか顔が丸みを帯びるようになり髪の毛も伸びてくると、女性の社員さんは「私より可愛いじゃん」とか「お化粧の仕方教えてあげるとか」皆さん好意的でしたね。
牧野さんはもともと整った顔だちをされてますもんね。
お母さんがロシア人ですので、顔のホリが深く肌も白くてお人形さんみたいと子供の頃からよく言われますね♪
私服を男性っぽい服装ではなく、ユニセックスな服を着るようになってきた辺りから、男性の社員さんは優しく接してくれるようになりました(笑)
容姿が女性になり職場で困ったことはありますか?
人間関係で特に困ったことはないですが、トイレが共用でなく男女別なので、男子トイレに入ると最初の頃はビックリされましたね。
それも皆さんすぐに慣れてくるので、今は特に問題はないですよ。
6 今後の生き方
牧野さんは今後どのように進んでいきたいと思われていますか?
うつの時期を経験したので、残りの人生は落ち込むことなく楽しく生きたいんですよ。
それと金銭的にもう少しお金を稼いで気持ちの面での余裕ができればと思います。
私はゆくゆくはSRS手術をしたいですし、毎月クリニックに行くのにもお金がかかりますし、今よりももっと綺麗になりたいので美容にもお金をかけたいですしね。
それから今は工場で働いていますが、派遣ということもあり、ここでキャリアを積んでも意味がないのかなと考えたりもします。
ただ今の私の様に「戸籍上が男性で見た目が女性」の状態で働ける会社は少ないないだろうと思いますし、戸籍上女性になったとしても、今の日本の現状では女性の賃金は男性よりも低いですよね。
そう考えると、私の本来の理想である女性の容姿で働いて、それでいてお金も稼ごうと思ったら自分で商売を始めたほうがいいのかなと考えたりします。
美塾さんの起業に関する記事をいつも見て、参考にさせていただいてますよ♪
それは非常に光栄です!
ありがとうございます♪
それでは最後に牧野さんのこれからの抱負をお聞かせいただけますか?
今の現状に決して満足をしていはいませんが、うつ病で引きこもっていた頃から見れば「なりたい理想の自分」に向って確実に一歩ずつ歩を進めています。
思い通りにいかないこともありますが、進むペースには気を取られず歩みを止めずに進んでいきたいですね。
いつか「なりたい理想の自分」になれたらまたインタビューしてもらいたいですね♪
こちらこそ、その時は是非お願い致します!
今日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました♪
~インタビューを終えて~牧野さんから学んだこと
サッカーに情熱を注いだ学生時代。
その中で経験した挫折、うつ病、そして自身のセクシャリティに関する悩みを牧野さんはこれまで乗り越えきた。
彼女が語る過去の話に一切の暗さや影を感じないのは、彼女が懸命に目の前にある今を生きているからだと感じました。
そんな牧野さんは「なりたい理想の自分」というものが明確にあり、「なりたい理想の自分」を実現するためには、「自由」と「お金」が必要との考えのもと、雇用をされるのはではない『起業』『独立』という選択を視野にいれておられました。
今回のインタビューをご覧になっていただいている皆さんも、まずはフラットに『理想のライフスタイルを送っている自分』を想像し、逆算して自分は今何をすべきなのかを考えてみてはいかがでしょうか?
◆インタビュー記事を読んで下さる皆さんへ
これからもニューハーフ美塾では、今をハッピーに生きるニューハーフさんへのインタビュー記事をドンドン掲載していきます!
『こんな質問をして欲しい』ということや『こんな情報が欲しい』ということがありましたら、ドシドシご意見をお寄せ下さい。
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