今回のインタビューに答えてくださった方は、
1987年岡山県生まれの大城 美和子さん(30歳)です。
165センチ55キロ 性同一性障害 女性ホルモン摂取中 性適合手術はされていません。
大城さんは個人事業主として複数の仕事を掛け持ちしてらっしゃいます。
その掛け持ちしているお仕事の内容は、これまでの経歴を生かしたお仕事であったり、
自身の成長につながると感じるお仕事であったり、自分の大好きなことをお仕事にされたりしています。
そんな大城さんの働き方を聞いたときニューハーフさんに限らず
かつてない早さで移り変わる激動の時代に生きる私たちに、大いに参考になると思わざるを得ません。
1 夜の求人と昼の求人に応募して感じた『妥協できないこと』
ニューハーフさん向けの求人はご覧になったことはありますか?
はい、見たことありますよ。
私はお酒も好きですし、歌も好きなんですけど見世物扱いは嫌なんですよ。
前に一回飲み屋さんの面接に行ったことがあるんですけど、店の前まで行くと「オカマ始めました」っていう張り紙が貼ってまして(笑)(笑)
冷やし中華始めましたみたいな感じで?(笑)
「オカマ始めました」ってなんだよって思いました(笑)
そういう感じたと嫌だなって思いますよね。
それではお昼の仕事の求人情報で、既に女性の容姿の方がお仕事を探すのは難しいですか?
実際に私の話になるんですけど、難しいと思いますよ。
まず入社するまでが難しいですね。
私の場合は面接のときは女性向けのリクルートスーツを着ていき「性同一性障害なんです」といった事情を説明をしますね。
事情を説明した時はどのような反応が多いですか?
これまでお昼の仕事の面接に女性の容姿で行ったことがあるのは、美容関係とアパレル関係とWEB関係の会社なんですが、どこも「あー大変なんですね。」「ご苦労様されてらっしゃるんですね。」といった反応ですね。
面接に行かれた業種は服装や髪型などが比較的自由な業種ですよね?
やはりそういった業種の方が採用されやすいと思われますか?
究極的な話ではパス度の問題というか、女性に見えて喋りも普通に女性の声だったら業種はそれほど関係ないと思いますよ。
やっぱりどうしても見た目が完全に女性でも、話して男だってバレたら見た目に関して緩い業種でも難しいと思うんですよ。
対応するお客様に『うん?』と思われると駄目でしょうね。
過去にインターネットの広告関係の会社に就職していた時ですが、仕事は普通に頑張れてやれているつもりだったんですけど、体育会系の社風でフロアで社是とか月の売り上げ目標とか朝礼の時に声を張り上げて出さないといけないんですね。
そうなるとどうしても男性の声になっちゃうんですよ。
どんだけボイトレしても駄目で、、、
すごくいい会社ではあったんですが、ふと思ったんですある日。
「あーこれってなんか、男性として働いているのと変わんない」って。
そこで精神的に崩れちゃって、せっかく正社員になったのに辞めちゃったんですよね。
夜のお仕事の話でも仰ってましたが、大城さんは男として見られたり或いは見世物扱いされることに耐えられなんでしょうね。
そうですね、そこが一番妥協できないところなんでしょうね。
私は性同一性障害の診断を受けているんですが、私の様に性同一性障害の診断を受けているコは、男性と見られることや見世物扱いになることは嫌だと思いますよ。
中身の性自認は女性なので。
2 東京と岡山を往復した時期
お仕事の経歴を教えていただけますか?
地元の岡山の高校を卒業した後はゲームデザイナーになりたかったので、ゲームを制作する会社の求人に応募したんですけど採用にはならなかったんですね。
それから小さい頃から岡山を出て東京にずっと行きたいと思っていたので、東京に行く資金を母に借りて東京に行こうと思ったんです。
それで母に相談したら、母の兄にあたるおじさんが当時建設業を営んでいたんですが「だったらおじさんの仕事を手伝ってお金を貯めたらどう?」と言われたので建設業の仕事を手伝い始めました。
それから東京に出る23歳ぐらいまではずっと建設関係のお仕事をしていましたね。
結局23歳の時に東京に出てきてたんですが、東京に出てすぐに体調を崩したり、当時付き合っていた彼女と別れたりして精神的に参ってしまいすぐに岡山にっ戻ったんですよ。
すぐに岡山に戻られたんですね。
再び岡山に戻ってからはどのようなお仕事をされたんですか?
建設業はもう体力的に厳しいので、座って出来る仕事のHPを制作する会社で働き始めました。
エモーショナルマーケティングというのをその会社で徹底的に畳み込まれまして、HPの制作だけでなく顧客にヒヤリングに行きそのお店のどこを売りにするのかという差別化であったり、どういうキャッチコピーであれば成約に結びつくのかであったりをコンサルする様なこともしていました。
それからロゴの制作や画像の加工なども色々やってましたね。
建設業から全く違う業界への転職ですが問題はありませんでしたか?
小さい頃から外で遊ぶよりもゲームがとかパソコンを触るのが好きでしたので、学生時代は自分でプログラミングを勉強したりイラストを書いたり画像の編集とかもしてたんですね。
なので仕事はすぐに慣れましたね。
最初はアルバイトでしたがすぐに社員になりましたし。
それからまた東京に出てこられますが、どのような流れでそうなったのですか?
岡山の仕事は最初はよかったんですが、段々と残業や休日に出勤して欲しいみたいなことも増えてきたので、友達の紹介でカメラの部品を作る工場のお仕事に転職したんです。
その工場で働いている時期に、やっぱり東京に行きたいなと思うことが増えてきて、、、
それほど東京に行きたいというのは何か理由があるんですか?
友人が多いということもあるんですけど、岡山自体にあんまりいい思い出がなくて、、、
うちは小さい頃は母子家庭で、普通はしなくていい苦労も一杯しましたし、何か振り返ってみると良い人生だったのかなぁと疑問が残りますね。
家族旅行とかも行ったこともないですし。
それでは岡山での生活は我慢することや嫌なことが多く、それで東京で好きなことをしたいなというお気持ちになられたんですね。
そうですね、やっぱり小さい時とかって家庭のことでいじめられたりとかもあってですね、名字も3回ぐらい変わったんですよ。
母が再婚した人の中には亡くなっちゃったりする人もいて。
妹が一人いるんですが、私が岡山に戻ってきていた時期に、旦那に浮気されて離婚して妹も実家に戻ってきたんです。
そのときの妹がすごい情緒不安定で、、、、
そういう情緒不安定で荒んでる妹と家で生活するがとても苦痛でした。
そんな感じで岡山に全然いい思い出がなくて、それで東京で自分の好きな音楽とかゲームの制作をしたいなという想いが日に日に強くなるような感じでした。
3 生活の基盤を整えたい
将来的には完全に女性の体にされたいのですか?
性転換の手術は目標にはしていました。
「していた」ですと過去形ですが今は目標ではないのですか?
前よりも焦ってはいないというか、まあ変えたいですけどいずれという感じですね。
今は生涯を通して大好きな音楽を制作し発信していきたいなという想いが強くて、作品を作って出したいなというそこに気持ちが向いていますね。
とりあえず今は音楽やゲームの制作などの制作活動に専念出来る時間を増やせるように、生活の基盤を作りたいなぁと思っています。
生活の基盤をですか?
実は過去に生活保護を受けていたことがありまして。
二回目に東京に出て来てからのことなんですが、ミキシングエンジニアになりたいと思い、コンサートや舞台の音響を整える仕事のPA会社に就職したんですね。
そこの会社で受けた定期的な健康診断で、仕事が続けることが出来ないレベルの病気が発覚したんです。
発覚してからは、お仕事からも音楽の制作からも離れてしまっていた時期があったので、生活の基盤を整えたいなという思いは強いですね。
それから丁度休養していた期間に自分の性も見つめ直してみたいと思って、カウンセリングに通い始めたんですが、そうしたら病院で性同一性障害の診断が出たんです。
正式に診断が出るまでは長かったんですが私はそれからホルモンを開始しました。
ホルモンの摂取を始めてからはどのような変化がありましたか?
私は胸がすごく出てきましたね。
副作用もなく逆に摂取して精神的にも落ち着きました。
ただ少し涙もろくなりましたね、でもこれは年を取ったからかな(笑)
筋肉が落ちたりとかはなかったですか?
もともと筋肉はなかったです(笑)
太りやすくはなったかな(笑)
太らないように一食を青汁に置き変えてます、フフッ(笑)
4 今後の展望
現在はどのようなお仕事をされているんですか?
私はこれまでWEB関連のお仕事に携わることが多かったので、HPの制作やWEBのマーケティングなどを個人事業として請け負っています。
それから個人事業の場合はスケジュールの融通がけっこう付くので、自分の成長のためにこれまで経験したことがないことも経験しようと思いまして、最近になりタイマッサージ屋さんで働きはじめました。
自分の成長の為にですか!
それはすごいですね!!
元々マッサージを受けることが好きだったというのもあるんですが、今はどのメディアでも盛んにロボットに仕事を奪われるんじゃないかと言われてますよね。
でもやっぱりロボットにマッサージされるよりも人の手でマッサージされる方が、私は気持ちいいと思うのでマッサージのお仕事は廃れないのかなぁと思うんですよね。
早くお金を貯めて近いうちにタイにマッサージの資格を取りに行きたいですね♪
今は幸せですか?
今は幸せですね(笑)
鏡を見て女の子として生きると決めてよかったなぁって思いますね。
10歳下の彼女もいますし毎日楽しいですよ♪
パートナーは女性なんですか!?
はい!
私は女性として女性が好きなので、恋愛対象は女性なんです。
まぁただ幸せは幸せなんですけど、贅沢を言うとバランス的にはWEB関連の仕事の時間をもう少し減らして、大好きな音楽の制作に携わる時間と、成長に繋がるタイマッサージの仕事の時間を増やせたらもっと最高ですね。
ぜひ大城さんの理想のライフスタイルを実現してください!
今日はありがとうございました。
頑張ります!
ありがとうございました♪
~インタビューを終えて~大城さんから学んだこと
大城さんは『WEB』『タイマッサージ』『音楽』と3つの仕事を持たれています。
仮にどれか1つの仕事が駄目になったしても、残り2つの収入源があるのでリスクは分散され大きなピンチにはなりませんね。
また別の見方をすると、3つの仕事のうちの2つをかけ合わせたり、もしくは3つともかけ合わせることで新たなビジネスが生まれる可能性もあります。
さらに彼女はのセクシャリティのニューハーフというキャラクターをもかけ合わせると、もっともっと面白いビジネスが生まれる感じがしました。
これまでずっとキャリアを積んできた仕事だけに取り組むのででなく、大城さんのように自分で自分のキャパシティを狭めず、自分の可能性を広げる成長の為に働くといったアクティブな姿勢は大いに参考になりますね。
日本人は古くから「石の上にも三年」ということわざに代表されるような、「1つのことをコツコツと続ける」ことを美学とされます。
しかし少子高齢化問題、年金問題、終始雇用の崩壊と時代は大きく変わろうとしている中で、これまでの価値観である「この仕事一本で一生食べていく」ということは難しいのではないでしょうか?
またその仕事自体がなくなる可能性もあり得えます。
そんな時代に、大城さんのように複数の仕事を抱えそれぞれの仕事に、『得意なこと』『成長のため』『好きなこと』と違う意味を持たせることは大いに意義のある働き方だと感じました。