【今回のインタビューに答えて下さった方】
▼大矢理香子さん(31歳)
過去に福岡で教員免許の資格を生かして、中学校や高校の教師をされていた経歴をお持ちです。
現在は性適合手術のため、一旦教師の仕事を離れられましたが、『子供と接する時間が大好き!』という想いから、教師として復帰することを目指し就職活動をされています。
私生活では愛するパートナーと過ごす時間が何よりも幸せという大矢さんです。
◆目次◆
1.人を好きになることのない青春時代
2.お仕事について
3.性適合手術について
4.女性の体になって挑戦したいこと
5.人生のターニングポイント
6.理想のライフスタイル
7.読者のみなさまへ
自分の意思で『自分はこう生きるんだ』って選んだら、後悔は少ないと思います。
『私は男で生まれたのは良かったと思っています。』
『男性として生まれて女性として生きていくっていうのは、まあ変わってるし面白いのかなと思ってます(笑)』
そう明るく話す大矢さんに、これまで彼女が経験された『睾丸摘出手術』や『性適合手術』をはじめ、ご自身の半生をたっぷりと語っていただきました。
1.人を好きになることのない青春時代
小さいころはどんなお子さんでしたか?
割と普通の男の子でしたよ。
特別女の子とばかり遊んでたとかもないですね。
それではいつ頃からアレッ自分は周りの男の子と違うのかなと思い始めたのですか?
物ごころがついてから大学生になるまで、別に男性も女性も好きになることがなかったんですね。
中学生や高校生ぐらいになったら、周りでは付き合う子も出てきたりとか、「クラスメートの誰のこと好き?」みたいな話を友達とするじゃないですか?
でも自分は好きな子とか出来ないし、「まあちょっと変なんかな~」とは高校生ぐらいの頃には薄々思ってたんですけど、、、。
それから高校を卒業して、大学に入学してからも恋をすることは一切無くて、「あ~やっぱり私は人と違うのかな~」と思うようになっていきました。
その気持ちだけではまだ疑惑という段階ですよね?
自分は確実に周りの人と違うと確信したのはいつ頃になるんですか?
大学の在学中なんですが、睾丸を取りたいという感情が出てきたんです。
人を好きにならないし、恋愛感情も持てないし、体毛とかが生えてくるのもちょっと嫌に感じ始めたので、それだったら男性ホルモンをカットしてしまおうという気持ちになりました。
そのような心境になられたんですね。
そういった睾丸の摘出手術に関する情報はどのように収集されたのですか?
インターネットとショーパブでのアルバイトですね。
大学生の時にニューハーフのショーパブでボーイさんのお仕事を始めたんです。
舞台の照明を調整したり、ドリンクを運んだり、席案内をしたりするお仕事です。
ご自身で舞台に立つことは無かったんですか?
何度かお店の人に勧めていただいて、ダンスや歌ったりしたことはあるんですが、私はどうも好きになれなくて向いていないと感じました。(笑)
インターネットからの情報だけでなく、実際に女性ホルモンや睾丸摘出手術、性適合手術を経験されている方達とお話し出来たのが良かったですね。
自分が今後どう生きていくかだいぶ勉強にはなりました。
今でもその当時お店で働いていた人達とは連絡を取り合ってます。
それでは実際に睾丸摘出の手術はいつされたんですか?
大学を卒業するまではしない方がいいのかなと思ったんですけど、大学の在学中に手術しました。
手術の前にまずは女性ホルモンを個人輸入で手に入れて、それから半年ほど女性ホルモンを摂取して美容外科に行きました。
もうその病院はなくなってしまったんですが、二重瞼の整形手術に定評のある先生でとても面白い先生でした。
芸能人の○○の手術は俺がやったんだと仰ってたのを覚えています。(笑)
初めて病院に行った日に「君は家遠いし、次の人の手術まで時間あるし今日取って帰る?」と聞かれたんで、「はい!取って帰ります」と言ってその日のうちに取って帰りました。
帰りの電車では麻酔が回って涎たらして寝てしまい、降りなきゃいけない駅を寝過ごしちゃいましたね。(笑)
すごい体験ですね。
睾丸を取った後は気持ちの面など何か変化はありましたか?
スッキリはしましたよね。
安心感というか、これで体つきもゴツゴツしなくなるし、胸毛とか体毛も多少減るだろうし。
それから実際に睾丸を取ったら、男性とくっつく機会も増えたんですよ。(笑)
今思えば睾丸と一緒に、心の面の引っかりみたいなものも取れちゃったんでしょうかね。(笑)
2.お仕事について
大矢さんが初めて就かれたお仕事は何ですか?
中学の教員です。
学生時代に教員の免許を取得しました。
私自身が子供が好きということもありますし、自分は子供が出来ないので、そういう世代の子達と過ごす時間は貴重ですし楽しいですね。
夜のお仕事を経験されたニューハーフさんは、お昼のお仕事に戻るのが大変なようですが?
昼夜逆転の生活が続き、肉体的や精神的にも辛くなってくることがあると聞きます。
私の場合は、資格があったということもありますが、20代の頃は就職活動で困ったことは特にないですね。
さすがに30歳になると、相手側もこれぐらいのことは出来て当たり前でしょ、といった経験面を求められるので、アルバイトですら決まりづらいといったこともあると思います。
そういった点からも、何か1つでもつぶしの効く資格を取っておくのがいいのかもしれませんね。
また夜のお仕事1本でなく、お昼のお仕事を本業で持ちながら、夜のお仕事を副業にするなどして、お昼の仕事の経験もある程度積んでおいた方がいいのかなと思います。
3.性適合手術について
大矢さんは性適合手術を終えられています。
私は自分の人生で性適合手術はやらないでおこうと思っていたけど、段々やっぱり・・・30歳のラインがあるじゃないですか?
20代って別にしなくてもいいなと思ってたんですけど、27歳を超えたぐらいから、したほうが将来的にはいいのかなと思いだして。
それはなぜ?
宙ぶらりんになっちゃうんですよね。
男性だけど見た目がこんなん(女性)だってなっちゃうと、生活がしづらいことが出てきて、年齢を重ねるごとにそれって増えていくのかなと思ったんです。
例えば具体的にどういった点ですか?
色んな場所で書類と容姿と見比べられてどうなってるのっていうことがあります。
例えば病院にいったときでも最初は聞かれるし。
パスポートとかも?
パスポートとか運転免許証はいいんですよ。
写真があるんで。
写真のない健康保険とかだと「他人のを使ってるんじゃないの?」と思われたり。
それから就職もそうですし、お風呂とかもトイレもそうですし、これから人生を生きていくうえで手術をした方が生活しやすいと思ったんで。
実際に手術をされたのはいつなんですか?
30歳になってからタイのバンコクでしました。
手術の後はどのような心境でしたか?
自分の中で、ちゃんと女性としてやっていかないといけないという意識が出てきましたね。
良いか悪いかは分かりませんが、なにか自分の大事なアイデンティティーも無くなったかなと思うので、またこれから新しく自分のアイデンティティーを作っていけばいいのかなと思っています。
4.女性の体になって挑戦したいこと
女性の体になって挑戦したいことはありますか?
普通の女性として生きていきたいですね。
結婚もありますけど、それは相手があってのことなんで。(笑)
自分自身は体だけでなく「戸籍」も変えて、ちゃんと女性としてやっていくというのも一つの継続的なチャレンジなのかなと。
それは仕事においてもですよね?
仕事の時間も普通の女性として生きていきたいですね。
今までは雇われるときは、戸籍が男性でもこういう見た目の人(女性)ですよ、っていう雇われかたが主だったんですね。
今後は見た目でなく「書類上の戸籍も女性です」として入っていくので。
見た目だけでなく、書類上の戸籍も女性としてやっていくっていうのは今までとう違うんですよね。
その点はご自身にとっては大きなことですか?
女性同士のコミュニケーションの取り方は男性とは違います。
女性は同性に対する扱いと、男性に対する扱いが違うので、女性になれば、完全に女性のコミュニティに入っていかなくてはならないかもしれません。
今、就職活動の合間に、女性だけが所属するキャバクラで働いているんですけど勉強になりますね。
ニューハーフさんのお店でなく、一般のキャバクラで働いているんですか?
性適合手術をするときにそちらの方に専念したかったので、一旦教師の仕事は離れたんですね。
現在は少し体も心も落ち着いてきたので、また教師に復帰しようと思って就職活動をしているんですが、就活期間だけでも空いてる時間にお金を稼ごうと思い、先日キャバクラのボーイさんのお仕事に応募したんです。
そうしたら面接の時に裏方のボーイさんじゃなくて、キャストとして明日から来てほしいと言われて、今はキャバクラに遊びに来られるお客様と、お酒を飲みながら楽しくお話させてもらってます。
5.人生のターニングポイント
ご自身の人生で一番の転機、ターニングポイントはいつになりますか?
睾丸摘出手術をした前後ですね。
性適合手術でなく、睾丸摘出手術なんですか?
性適合手術の方が大きな出来事なのかと思いますが?
性適合手術が分岐点の分岐点といった感覚ですね。
睾丸摘出手術をすると、決断したことで人生の方向性が決まったので。
一番最初の分岐の睾丸摘出手術の方がターニングポイントなのかと思います。
人生で一番悩んだ時期でもあるので。
ではもし悩んでいる過去の自分に声をかけるなら、どんな言葉をかけますか?
たくさん悩んでいましたが、「良かった」という選択は、やってみないとわかりません。
でも良くなろうと思って判断してきましたし、自分の生き方次第で幸せの形は決まると思います。
「どう転んでも何とかなるよ、どの道を選んでも良くなるよ」と言ってあげたいですね。
6.理想のライフスタイル
大矢さんの理想のライフスタイルを教えていただけますか?
旦那さんがいるといいなと思いますね。
私がだらしないので、専業主婦をしてしまうとダラダラしそうですし、子供も出来ないんで自分も働きに出てた方がいいかなと思います。
今の付き合っている人は「学校の先生に戻るのが良いんじゃないの」と言ってくれてるんで、やっぱり仕事中は子供に囲まれて、私生活では大好きな旦那さんと少しでも長い時間一緒にいれるのが理想ですかね。
今はパートナーの人といるときが一番幸せなので。(笑)
休みの日はたまに外食や旅行に行けたりするといいかなぁと思います。
7.読者のみなさまへ
最後に読者の方へ何かアドバイス、メッセージをいただけますか?
私なんかで恐縮です。(笑)
先ほど過去の自分へという中でもお答えしたのですが、自分のやりたい方を選べばいいと思います。
ただ、「自分でその道を選んだ」っていう自覚がいると思うんですね。
だから全ての悩みを、性の責任にするのは駄目だと思います。
何かのせいにせずに、「自分の意思で、自分はこう生きる」って選んだら、そのあとの後悔は少なくなって行くと思います。
辛いときは自分以外の責任にしてしまう人もいると思います。
逃げずに向き合って、本当に性のことについて悩むとそれは解決しますし、いい意味で割り切らないと生きていけないので。
私は男で生まれたのは良かったと思っています。
男性として生まれて、女性として生きていくっていうのは、まあ変わってるし面白いのかなと思います。(笑)
自分は全然嫌じゃないですよ。
大矢さん、今日はどうもありがとうございました。
~インタビューを終えて~大矢さんから学んだこと
大矢さんは教員免許という資格をお持ちでしたので、就職活動で特に困ることはなかったとのことでした。
これはニューハーフに限らず、男性や女性にも当てはまることですが、教員免許に限らず、資格を取得したり専門技術を身に着けるといった、自分自身に武器(付加価値)を持つことが就職活動をする上で重要だと感じました。
ただそれ以上に重要なことは、大矢さんがインタビューの中で語られた、
『全ての悩みを性の責任にすることは駄目なこと』
『思うようにいかなくても、自分以外の何かのせいにしないこと』
『自分の意思で、自分はこう生きようと選ぶことが大事』
そのような自立心を持ち合わせなくては、いくら資格や専門技術を持っていたとしても、就職活動は上手くいかないような気がします。
大矢さんから言い訳はまったく聞こえてきません。
取材中はただ何度も大きな笑い声がこだましました。
◆インタビュー記事を読んで下さる皆さんへ
これからもニューハーフ美塾では、今をハッピーに生きるニューハーフさんへのインタビュー記事をドンドン掲載していきます!
『こんな質問をして欲しい』ということや『こんな情報が欲しい』ということがありましたら、ドシドシご意見をお寄せ下さい。
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