『はぁ~御堂先輩、やっぱりかっこいい♥』
今はここCAFE「彩都~Saito~」でアルバイトをしている。
そして御堂先輩。私の2つ上でみんなのお兄さん的存在。
いつもニコニコ笑顔で、アルバイト初日からずっと気に掛けてくれたり、
失敗ばかりをする私にも優しく元気づけてくれる。
私の憧れの人である。
『あんた今日一日で何回同じこと言ってんのん?』
自称ニューハーフの神様で「女の子として生きたい」という私の願いを聞いてスマホの中からやってきた。
『いいじゃないですか。片思いくらい』
『優しくて爽やかでキラキラしてて…見てるだけでもいいんです。』
『あんたよう見てみ。あんなイケメン、彼女の一人や二人くらいもういてるで。
それに内面なんて分かったもんちゃうわ。
ええ顔してる人間ほど怖いものないねんから。
男はケダモノ、男は狼…』
『うたちゃん?これストラップ?すごくかわいいね。』
『狼でもいい♥♥♥』
(なんて単純な神様なんだろう)
『いらっしゃいませ。』
お店の入り口に目を移すと御堂さん目当てで毎日くる女子高生三人組がキャァキャァと賑やかな声をあげながら入ってきた。
『いつもありがとうございます。』
女子高生三人組
『きゃぁ、御堂せんぱ~い』
『こっち向いた』
『あんたじゃなく私に向いたの』
女子高生三人組
『あの~御堂さんはどんな娘がタイプなんですか?』
『タイプ…女の子らしい子が好きかな。』
女子高生三人組
『じゃあ、私明日そっこーネイルしてくる』
『それ校則違反じゃん』
『きゃははは!』
『うぅ…女らしい子…ハードルが高い…。』
『仕方ないわね。あんた普段、ダボダボの服ばかり着てるし女らしさは皆無やもんね。』
『そもそも生まれた時点でスタート地点が女と違うねん。
21年経ってまだスタート地点にも立ててへんねんからハードルというより崖の下から見上げた富士山登るようなもんやね。』
(そんな高かったのかっ!)
『それでも登らなあかんのよ。立ち止まったら変わらへんし見える景色も変わらへんで。』
『さぁレッスンを始めんで!ウタ!』
(そうだ…レッスンのことすっかり忘れてた。)
『……ここは』
『ここは、ヒ…ヒマムラ?』
『そう、みんな大好きヒマムラや!』
『あの、私、女の子になりたいんです。』
『ヒマムラってキャラクター物の服とか余計な英字がプリントされたTシャツとか、
正直、野暮ったいイメージしかな…』
『つべこべ言わず買っといで!』
『但しこの中から、普段着れるもので自分の中で最も女性らしいと思う服を買ってきなさい。』
(女の子になりたいしヘルマの言う通りにしてみるだけしてみようかな)
『そういえば私今までネットや通販でしか女の子の洋服を買ったことがなかったな。』
『お店で買うの人目が気になるし、最近Amazonでは無料で試着できたりもするから、もっぱらAmazonで購入してたなぁ。』
『でも今更なんでわざわざこんなところまできて洋服買わなきゃいけないんだろう。普段着れるもの…。』
『あ、これかわいいー』
(って、思わず手に取ってみたけど…周囲の目が気になる…棚に戻そう)
『あんたサイズも値段すらも見てへんやんか!』
『えへへ。だって私まだ格好が男の子だし、変な目で見られてる気がして。』
(話し声が聞こえる。私のこと噂話しているのかなあの人、女装でもするのかしらとか)
(周りが気になって、か…買えない!)
『じれったいわね~。ヒマムラはユニックロとかと一緒で声を掛けてくる店員がおらんやんか。』
(なるほど。私がショップ店員に話しかけられるともっとタジタジになるの分かってて、ヘルマはヒマムラに連れてきてくれたんだ!)
『まぁでも最初、買うのは勇気がいると思うわ。』
『私も初めて洋服買うた時は恥ずかしくて、カゴをレジまで持っていけなくて、開店から閉店までヒマムラでオーラスしたし。』
(随分とシャイな人だったんだな)
『まあよっぽど恥ずかしかったらカゴに普段着る男性用の服を入れとくとええわ。
その下に女性服を隠すことできるから、周りの客にばれずに試着・購入しやすいわ。』
『最初はそんなんでいいのよ。ユニセックスファッション(※1)でもええしジェンダーレスファッション(※2)でもええねん。』
※2 ジェンダーレスファッション:男性用・女性用関係なく、男性が女性用の、女性が男性用のアイテムをファッションに取り入れること。
『今まで着ていた服に女性らしさを少しプラスしたり、女子が着ても男子が着てもおかしくない中性的な格好を日常から出来るように目指すねんで。大事やのは、普段からそういった服を着ることやねん。』
(普段から着ること…)
『それに、女の子の間でもジェンダーレスファッションは一つのトレンドやで。』
『チェスターコート・ライダースジャケット・ブルゾン・オーバーサイズのTシャツ・セーターなんかも出回ってるわ。
ましてやチェスターコートなんて男性専用のアイテムやったもんが今や女の子も当たり前のように着てるしな。』
『わかった!私なりに可愛いと思うものや綺麗と思うものををちょっとでも取り入れてみる。』
『お店で自分好みの女性の洋服を手にして選ぶ喜びを知ることも大事やで。』
『これから女の子として生きていくなら、女の子を楽しまな損やと思うで。』
『うたちゃん今日は雰囲気がちがうね。
無理していないっていうか、似合ってるね。』
『ほほほほほんとですか!? (やったー!)』
(閉店まで悩んで買った甲斐があった)
『まさかあんたまで閉店までおるとは…』
難易度
『日常でも女性らしいものを身に付けてみよう。』
最初からレディース服のコーナーに男性の格好のまま一人で何食わぬ顔をして入店するのは周囲の目もあってお買い物自体かなりハードルが高いです。
そのハードルを越えるために、先ずは今まで着ていた服に女性らしさを少しプラスしたり、女子が着ても男子が着てもおかしくない中性的な格好を自然に着こなせるようになっていきましょう。
実際に女の子の格好を始めてみるとわかりますが、女装するにもお金がかかります。外出できるくらいになるまでに洋服、下着、靴、コスメ用品、アクセサリー、財布・バックなどの小物・ウィッグ、それに加えてスキンケア用品なども必要になってくるでしょう。また、まだ男性として生活している方は普段の男性用の洋服にもお金がかかるので実質は二人分の洋服代を持つことになります。ユニセックス・ジェンダーレスファッションなどの少しづつ日常に女性物をプラスしていく方法は【1人分の洋服代で済む】【女性として生きることを日常化させる】【初期費用を抑える】ことを同時進行できるので、時間とお金の節約になります。(※あくまで女装をまだしたことが無い人や初心者向けの話なのでこのステップを飛ばせる方は飛ばしてしまいましょう。)
入口はどこからでもいいと思うのですが、重要なポイントは普段から常に女性物を身に着けること。
最初は見えないお財布や小物一つでも構わないので、自分が可愛いと思う女性物を少しづつ取り入れてそれを日常化していくことが、次のステップに繋がります。他人には見えないインナーからはじめ、他人にも見えるトップスやパンツを女性物に変えていくなど、どんどん女性らしさを増やしていきましょう。中性的な男性、もしくはボーイッシュな女性に見えるまでレベルが上がっていくとレディース服のコーナーにも入りやすくなって女性としての自分にも少しづつ自信が持てているはずです。
今日から女の子になっていくために
ヘルマのレッスンを少しづつ実行してもらうことになります。
これからのレッスンは、
ヘルマの言う通りそれほど難しいものではありません。
しかし、あなたの人生を
大きく変えるほどの効果を持つものです。
これらのレッスンは人によっては簡単だったり、
難しいものだったりするかもしれません。
それでも出来ることから
少しづつでも実行してみてください。
今までの生活から一変し本来の自分を取り戻すことができます。
さあ、
それでは大きく深呼吸して、
より女性らしくなるためにヘルマのレッスンをこなしましょう。