乙女革命レッスン02ー恐怖!全身鏡が映し出す真実

『あんな悩んでたのにえらい上機嫌やな。まだ一着しか買えてへんねんで。』

閉店まで悩んだ末、私はヒマムラでなんとかボーイッシュなファッションを取り入れることができた。御堂先輩からも似合っていると褒められたのはヘルマのアドバイスのおかげかもしれないと感心した。

『えへへ~。ありがとうヘルマ。御堂先輩に褒められたのは初めてで嬉しくって♪』

『禍福は糾える縄のごとし。
幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるという意味や。浮かれすぎて事故や災難に巻き込まれないようにきいつけなあかんで。』

『ウタさあぁぁ~~ん』

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『え!!だれ!?』

『周りの人達からすごい視線が集中してるんだけど!!』

『(ぜぇぜぇ…)ウタさんお久ぶりです!』
『わたくしのことお忘れになられましたか?中央高校の時クラスずっと一緒だったじゃありませんか!』

『ウタの知り合いか?』
『ごっついインパクトやな…』

(同級生?こんな人一度見たら忘れるわけもない!…とりあえずここから一刻も早く立ち去りたい。関わりたくない。)

『高校二年の夏休み、体育館の天井に挟まったボールを一緒に取り合ったこと覚えていませんか?』
『ボール投げつけて取ろうと二人で試みて、結局ボールもう一個天井に挟まっちゃいましたけど・・・』

『・・・・・・・・・・・・!!』

『もしかして堺君!?』

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(堺君。常に学年トップの秀才。全く表情もなく当時は「動く二宮金次郎」というあだ名をつけられていた程、冷静沈着、頭脳明晰、優等生の鏡だった筈なのに、一体どうしちゃったんだろう。)

『やぁ~ん♪思い出してくれたんですね!
それはそうとウタさんイメチェンしたんですか?随分と女の子っぽくなりましたね…ウフフ』

『堺君も大分、昔とイメージ変わったね。垢抜けたっていうか突き抜けたって感じで…』
(早々に話を切り上げてこの場を立ち去ろう。)

『そうなんです!イメチェンしたのよくお分かりになられましたね!流石ウタさん!
わたくし最近、女装を始めたんです。きっかけは3年前のこと。わたくしはヨーロッパ留学の為、フランスへ』

『そこでわたくしめは初めてロココの文化に触れたのです。17世紀、厳粛な文化に代り、後にロココと呼ばれる宮廷文化が開花。人々は美的生活のために桁外れの浪費をしました。これまでにない華麗で優雅で軽快な造形美…』

(どうしよう…。一刻も早く立ち去りたいのになんか語り始めちゃった。)


ー 15分後 ー


『ローブ・ヴォラントが主流になった摂政時代の末期。ヴァトー・ブリーツと呼ばれる極めてゆったりとしたローブで衿ぐり、もしくは両肩から裾に向かってフレアー状に広がる大きなブリーツの曲線美が夢幻的で…』

『ウタあんた凄い友達がおるんやな。聞いてもないのにまだ喋りよるで。』

『よう見てみ?周囲から注目されてるやろ。』
『女装し始めのころは堺君のように、自分が周りからどう映っているか分かってない娘が多いねん。』

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『理想の女性像をイメージして女装を始めるのはいいんやけど、自分の骨格、体格、顔立ち、肌質に合っていない女装をしている人が多いねん。』

『具体的な解決方法としては全身鏡を使って日々遠目から自分を見て分析することや。』
『さぁ!ウタ家に帰ってレッスンはじめんで!』

『はいっ!今すぐ家に帰ってレッスンしましょう!』
(堺君に申し訳ないけど、とりあえずこの場から立ち去りたい!)


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『なんだかすいません。急に家にまでお邪魔しちゃって(てへぺろ)』

(堺君の怒涛の会話攻撃で振り切れなかった…)

『よう分からんのがついてきたけどまぁええわ!』
『二人とも全身鏡の前に立って自分の姿をよく観察するんや!』

『観察?』

『せや!自分を客観的に見て理解するには観察が不可欠や!
今回は覚えることが多いから幾つかの項目に分けて教えるで!』

1.遠くから自分を見て観察しよう

『まず観察するのに必要なものは手鏡と全身鏡や!』

『全身鏡?手鏡なら普段から見てるけど…』

『手鏡の場合、自分の一番いい角度で顔を見て判断してしまうやろ?他人が見てるは顔だけやなく全身や。
『遠くから見る目』を意識して自分を見るようにするんや。』

『ウタの場合は自撮りは上手いけど、それは自分の一番いい角度を手鏡で確認したり、自撮りをしながら研究してるからや!
それと同じように全身も全身鏡を使って研究するんやで。』

『わかった。やってみる!』

2.全身鏡を使って自分に似合うアイテムを比べてみよう

『次は自分が持っているアイテムの中で、どれが自分に合っているか鏡の前で比較してみるんやで。』

『この服装にはこのバックの色よりこっちのバックの方が似合いそう。』
『トップスが緩めならパンツはタイトな方がいいかな?』

『その調子や!自分に似合うものを着てみて全身鏡を見ながら判断するんや。イメージじゃなく実際着てみて観察することが大事やねん!』

3.自分のコンプレックスを解消しよう

『わたくしは肩幅が気になります。少しでも華奢に見せるにはどうしたらいいでしょう…』

『恥ずかしいから最初はコンプレックスを隠すことだけしか考えられへんねん。肩幅広い人には深めのVネック、ドルマンスリーブやオフショルダーとか肩幅を華奢に見せるアイテムとか使うとええで。』

『それだけやなくて、コンプレックスをカバーするにはそこだけの箇所に注目するのではなく、全身を見られていることを意識してトータルのバランスを見ることが大切や。』

『具体的には大きめのイヤリングやネックレスをつけたり、ヘアスタイルにボリュームを持たせて視線を別の部分に誘導したりするんや。ボリュームを持たせるには太めのカールで髪を巻いたりするとええわ。』

4.自然光があたるところでメイクの練習をしよう

『メイクの練習する時は暗いところではなく自然光があたる明るい所で練習することが大切やで。』

『ぎゃぁ!ヘルマ先生大変です!
自然光でみると私の口元、青々としたヒゲが生い茂ってます!』

『せやろ?暗いところでは見えんかったファンデのノリも見えてきたやろ。』

『蛍光灯やと肌に青みがかり、白熱灯やと肌が赤みがかってしまうから、最初の内は昼間にカーテンを大きく開いて窓際でメイクするようにしたらええで。』

5.着心地いいものも取り入れよう

『最後は服の着心地や!なんと言うても着心地悪かったらおしゃれ以前に洋服そのものが着たくなくなってしまう。』

『おしゃれに疲れてしまった時、キツキツの洋服や肌触りの悪い素材を身に着けると余計に疲れてしまうから、自分にとって着心地のいい洋服も取り入れるようにしなあかんで。』

『分かった。これから服を買うときは、デザインだけじゃなく着心地のいいものも取り入れてみる!』

『女性らしさを感じられる柔らかい生地のブラウスなんかもオススメやでぇ。』


『そうやって自分で観察して試行錯誤することが、綺麗になっていくための近道や。』

『ウタさん、さっきより女性らしくなりましたね。私も生まれ変わったようです。』

『ほんとうだね!堺君のリボンも雰囲気が大人っぽくなったみたい。』

『よく気付きましたね!わたくし鏡を見ていて気付いたのです!わたくしの顔立ちはタヌキ顔じゃない…キツネ顔だってことに!』

『わたくしは更なる進化を遂げてスウィートな甘ロリ(※注1)から上品なクラロリ(※注2)に方向転換することに決めました。キュートなお姫差から落ち着いたお嬢様になるのです。今までは少女のあどけない可愛らしさを…』

注1) 優しいカラーを主体にした甘い雰囲気のロリィタファッション。
注2) 落ち着いたカラーを主体にした気品あるお嬢様のようなロリィタファッション。

ー 15分後 ー


『全く新しい日本独自の解釈を加えたティーンを中心としたストリートファッションであるロリィタファッションは私の中で永遠に比肩するものはない!そしてこれから私は上品かつ艶かかな美しさを表現したスタイル…』

『……うかつに褒めるんじゃなかった』

『まさか堺君までレッスンうけるとはね。』

『堺君にヘルマが神様って紹介してもなんの驚きもしなかったね。』

『ほんまやな。わたくしが持っているドールもおしゃべり機能がついているんですって今度はドールの話、30分近く熱く語ってたしな…』

『堺君は変わってる娘やけど楽しそうやな。
自分のなりたい自分になっているからやろうな。』

『確かに!昔の堺君より今の堺君の方が生き生きとしているわ。』
『自分かどう見られているかも大事だけど、一番は自分自身がファッションを楽しまなきゃね♪』

次回へ続くっっ!!

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難易度

『全身鏡を使って自分を分析してみよう。』
『自分に似合うアイテムを比較してみよう。』

最初に女装を始めたころは自分の憧れている女性をイメージして洋服を選択する傾向があります。しかし実際にその洋服を着て鏡で見てみると自分の思い描いていたイメージとは違い愕然とすることがよくあります。それは自分を客観的に見れておらず自分の骨格、体格、顔立ち、肌質、髪型を理解していないまま洋服を着用しているからです。
具体的な解決方法としては、全身鏡を使って日々遠目から自分を観察・分析してみましょう。自分自身が昼間街中を歩いているイメージをしたり、遠目から観察してみたり、どの部分が男性を感じさせるのか光や角度を変えたりしてみて毎日鏡を見続けてみましょう。鏡の前で自分に似合うアイテムを比較しながら、自分には何色が合うか、どんなアイテムが似合うのか判断していきましょう。ポイントはイメージじゃなく実際着てみて頭からつま先まで全体を見ることです。どんなに素敵なコーディネートでも、体格や顔立ちと調和していないだけで浮いて見えてしまうことはよくあるので、「近くから見る目」「遠くから見る目」を養っていきましょう。また視覚は人間の感覚の中でもっとも強く印象に残ったものを記憶するので、オシャレだなと感じる女性も日々観察してみましょう。自分が素敵だなと感じたコーディネートは無意識に頭に記憶されているので似たようなコーディネートを再現しやすいのです。おしゃれな人を見るだけで知らないうちにセンスが磨かれていくので意識して観察してみましょう。

今日から女の子になっていくために
ヘルマのレッスンを少しづつ実行してもらうことになります。
これからのレッスンは、
ヘルマの言う通りそれほど難しいものではありません。
しかし、あなたの人生を
大きく変えるほどの効果を持つものです。
これらのレッスンは人によっては簡単だったり、
難しいものだったりするかもしれません。
それでも出来ることから
少しづつでも実行してみてください。
今までの生活から一変し本来の自分を取り戻すことができます。
さあ、
それでは大きく深呼吸して、
より女性らしくなるためにヘルマのレッスンをこなしましょう。

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